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「引率登山」

「引率登山」

引率登山では、「リスクを冒さない」という姿勢が必要であり、自主登山では多少の悪天候でも行動することがあるが、引率登山では、天候が悪ければ原則として登山を中止すべきである。
「生命の安全」を他の全てに優先させる。

引率リーダーの危機の予見と回避能力の解釈について、主催者側には厳しい判決となり、この「安全性重視」の流れが今後、主流になっていくものと考えられる。しかし、登山界の一般的な見方は、未だに、参加者に「自己責任」を強調した従来型の登山指導方法を提供している傾向があり、判決を境に、新たな指導法の実施報告も見られないのが現状である。 
引率とは登山中の指導・誘導行為だけでなく、講習会などにおけるクライミングや登山技術に関する実技指導も含まれる。 
「リーダーとは、登山の際に生じる様々な危険に適切に対処し、登山を成功に導くために、パーティーを指揮統率する立場の者であり、リーダーは、コースの選択、変更、休止、登山の中止などに関し、他のメンバーより強い決定権限を持つが、その反面として危険の回避に関し、より高度な注意義務を負うものである」 
引率リーダーの場合、自主登山と異なる大きなポイントは、多くの場合、組織を背景とするため、講習会・研修会などを主催する組織の理念がリスクへの対応方法に大きな影響を与える。 
講習会への参加者が引き起こす様々な失敗事例をデータ収集し、分析、整理した上で対処法を考えておかないと、その場で問題点を指摘し、指導することは不可能に近い。このような学習上のリスクを想定することが、引率リーダーと自主登山リーダーとの大きな違いである。 
(2)危険な行為、講義内容への不服従とその妨害行為への対処 
講習会・研修会には、様々な技術レベルの受講者が参加するとともに、様々な性格の受講者も参加する。その中には、危険な行為、講義内容への不服従と妨害、わがままな行為をする者も混じっている。このようなケースでは、実技技術の指導中、毅然とした態度で、注意、警告が必要となる。もし、危険行為を行っているにもかかわらず、注意がなされないと、事故発生の時点で主催者の責任が問われる可能性がある。本件も、予め受講者に伝えておく必要があるが、前述の技能レベルに応じたクラス編成等の内容とは異なり、同意書の中に書き込んでおく必要がある。 
講習会の開始時点で参加者には予想されるリスクを伝え、既述した、わがままな行為、危険行為への対処などを記した「同意書」を示しておく必要がある。この同意書の法的有効性については認められていないが、十分に効果があると考えている。 
「あらかじめ本人へ危険性があることを伝える」ことはリスクの軽減、回避につながる行為のため、有効である。事故関係者の間では、本人が、登山リスクを知った上で挑戦した結果の事故として、家族との話し合いでも大きな効果があったという話が聞かれる。 



・通常の登山では、ロープを使用しない箇所でも引率登山では使用する場合がある。

・自主登山では、下山時にヘッドランプを使用することは多いが、通常の引率登山では、そのような事態は避けなくてはならない。

     日の出         日の入り      行動可能時間
冬山 6:30~7:00   16:30ごろ         9時間
春山 5:00~6:00   17:30~18:30     10時間
夏山 4:30ごろ      18:30~19:00     11時間
秋山 6:30~7:00   16:30ごろ         9時間

1 集団登山の特徴 
(1)集団登山の種類 1学校登山とは、教育的価値により全員参加を前提とした登山経験 2募集登山には、 
・市町村民登山・・・親睦、レクリエーションを目的に行う・エージェント(旅行会社、新聞社など)・・・登山需要に対して営利目的に行う 
(2)一般の登山者との違い体力・技術・経験・年齢の差が大きい、または山を知らない初心者の集団 
隊としてのモラル・パワーは発揮されない参加者の連帯感・相互扶助意識はゼロに等しい(特に募集登山
2 登山計画 
登山計画書は、行き先の警察署に必ず提出する。

(1)計画の進め方(一例) 1事前調査(下見)または前年度の計画を参考に概要を決定(山小屋、交通手段の確保) 2計画書の作成
3
事前準備・事前学習
4(
可能ならば)直前下見〈1~2週間〉
5
山行引率〈当日〉
6
反省会 

5引率組織 
・引率責任者と指揮系統をはっきりさせる。 
・引率者数は、学校のような一律の集団では10~15人に1人くらいでもよい。 6留守部隊 
・万一の時にあわてぬよう、留守部隊(留守本部、現地応援、報道対応等)の分担を明確にしておき、緊急時の連絡体制(連絡網)を作成しておく。 
女子生徒が参加する場合は、引率教員に女性教員を加えて、個に応じた安全指導等に十分配慮する。

登山期間・コース・日程について
(1) 多人数での行動は、予想以上に時間がかかるので、日程には十分な時間的余裕をもつように計画する。
(2) 生徒の体力差を考慮し、体力の低い生徒に十分配慮して計画を立てる。
(3) 実施期間は3泊4日以内とする。
3 出発前の準備について
(1) 引率教員は、現地の状況・コース・日程・安全対策等について事前の打ち合わせを十分行うとともに、参加生徒にもその内容を周知する。
特に、防寒具、雨具、着替え、予備食糧等の装備、身体にあったザックや登山靴の準備などを適切に指導する。
(2) 天候の変化、傷病の発生等不測の事態を想定し、事前に退避コース、班の編制替え、引率教員の役割分担の変更等について共通理解を図るとともに、具体的な計画立案を行う。
特に次の点について対策を立てる。
・登山実施中に学校との連絡が円滑に取れるよう工夫する。
・現地の医療施設について調査し、緊急の場合の連絡方法や搬送方法について確認しておく。
1ゆとりある引率とは 
・引率者間で、参加者の情報共有が図られている。・行動時間、行動範囲、スケジュールにゆとりがある。・引率者の数と質が十分である(数だけでなく、質が重要) 

2(4)団体装備(引率者は、不要と思っても持って行かねばならない物がある) 救急医薬品(テーピングテープ、ブドウ糖も加えたい)
通信機器★携帯電話は場所によって使えない
ロープスリングカラビナツェルト(女子のトイレ時にも利用できる) ストック(伸縮式が望ましい) ナイフ小型ペンチ、針金など 

山岳保険は、遭難した場合の捜索や救助費用などが多額になる場合が予想されるので、任意ではあるが加入について配慮する。
★装備の所持者を確認しておき、いざというときすぐに使えるようにしておく 
(5)下見下見の観点 

・コースタイムの見積もり
・分岐点や不明瞭な部分の確認
・危険箇所の点検と通過方法の工夫
・集合や大休憩場所の選定
・水場やトイレの適地
・展望や自然観察適地
・緊急避難地、エスケープルート(逃げ道) ・山小屋の使用について(特に学校登山では、使用上の注意点、部屋数、食事のとり方、 

水筒の補給方法、予定日の混み具合、同宿校等の確認) ・体調の悪い参加者の引き返し判断地点の確認・通信手段の電波状況等の確認 
4 引率技術 

(1)出発準備 1人員確認・・・・・人数だけでなく、名簿で確認(事前にリストをつくっておく) 2健康状態の確認・・風邪、頭痛、腹痛等の体調、寝不足でないか、朝食を食べたか等 3装備の確認・・・・雨具等重大な忘れ物をした者はいないか 4行動確認・・・・・今日の予定を確認(概念図、比高断面図などを利用する) 5隊列の決定・・・・体力やその日の体調により、遅くなりそうな者を前に出す 6トイレの確認・・・出発前に済ませる
7
準備体操(ストレッチ)
8
靴ひも、パッキングの確認 

(2)歩行技術 1隊列(順番
・先頭(引率者、ペースメーカー)体力的に弱い人→次に弱い人 ~~~~~最後尾(引率者、リーダー

2ペース
・先頭(ペースメーカー)のペースによって登山の善し悪しが決定する。・歩き始めはとにかくゆっくり。・行動予定時間に縛られず、体力的に一番弱い人を観察しながらその人のペースに合わ 

せるのが、結果的に早く到着することになる。・汗をかかないくらい「ゆっくり」歩くと、バテる人を出さない。・「ゆっくり」とは=1時間に標高300m位のペース(学校集団登山では、200m) ・下りこそしなやかにゆっくりと(登りに比べて事故が多く膝や足を痛めることが多い) 
★要事前指導 
・落石や危険の防止のためとともに、自然保護のためにも登山道以外を通らない。 
・近道をしない(直登などのコースはかえって疲れるし滑る) 
・浮き石に乗らないようにするのは勿論、落石を起こしてしまったら「落石(または「ラークッ」)と叫ぶ。 

7危険箇所の通過
・危険箇所は一人ずつ通過する。・ハシゴの下りでは「後ろ向き」で、手はステップを持ち、足も確実にステップに乗せる 

よう指示をする。・鎖やロープが設置された箇所では、鎖やロープにもたれかからず、補助的に使うことを 
指示する。・岩場がある場合、不安な人には事前に休憩などの時に近くの岩にとりついて三点支持の 
訓練をしておくのもよい。・雪渓の通過が不安な場合は、迷わずフィックスロープを張る。 
(3)休憩の仕方 1時間 
・「○分歩いたら△分休み」ばかりにとらわれず、広いスペースや景色の良い場所など休めるところで休まないと、ただ登るだけの登山になってしまう。 
・大きな集団では、間があいても笛やトランシーバーで連絡をとり合って一斉に休む(を詰めると後ろは着いたらすぐ出発になってしまう。そこで休めばまた間があくので同じこと) 

2場所
・とにかく安全な場所(上方からの落石がない、人やザックが落ちない)で休む。・ザックは山側におろし、人も山を背に座る。・雪渓などでは、落石や雪崩の心配があるので、一人は上方を向いて座り監視している。 

3健康状態の確認・ザックも開かずただ休んでいる人には声をかけた方がよい。・天候変化、体調に合わせて、衣類を早めに着る。 

4栄養分の補給
・腹が減らないうちに補給する。・腹が減ってからでは、食べたものがエネルギーになるまでにバテてしまう。・エネルギー源になるものは、糖質の多い甘い物。・筋肉疲労に役立つ物は、塩分(梅干しなど)やカリウムの多い物(バナナなど) 

5水分の補給
・のどの渇きを覚えないうちに飲む。・昔は「汗になって疲れる」と言われたが、今は汗で失われた分は補給するのが常識。・体重1kgあたり、1時間行動すると、5cc(5ml)の水分が失われる。つまり、 

体重50kgの人が6時間行動すると、5cc×50kg×6時間=1500ccとなり、 1.5l(500ccのペットボトル3本分)の水分を補給しなければならない。 
・塩分の補給も兼ねて、2倍程度に薄めたスポーツ飲料を利用すると、吸収もはやい。 
(4)ばてた人の対処 1糖分を補給するのがもっとも良い。ブドウ糖が特効薬だが、チョコレートやあんパンな 
ど甘い物をとる 2“足がつった

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